花京院家の愛玩人形
なんてニコリと微笑んで、紫信は茫然とするコージを残して本の貸出カウンターへ歩き出す。
おーい!?
ソレ、思いっきり愛想笑いデスヨネ!?
軽く凹みながらももう少し押してみるかと立ち上がれば、図書館の入り口前に地味な黒い傘を差して佇む地味な男が見えた。
自分に向けられたモノとはまるで違う可憐な笑顔で自動ドアをくぐる彼女。
その彼女から猫背気味に手荷物を受け取る、重い前髪で表情が全くわからない地味男、花京院 要。
ほんっと、なぜだ!?
いつもなら、ナニカが始まる予感どころか本編になだれ込んでるハズなのに!?
あんな非リア男から女を奪うのに、こんなに手こずるなんて…
(…
フフン。
それでこそ、手に入れ甲斐があるってモンだ)
コージは上唇を舌でペロリと舐め、不敵に口角を持ち上げた。
これくらいじゃ折れない。
多くの花を摘んできた手腕は伊達じゃない。
絶対に落としてやるからな!
耳の軟骨につけたリングタイプのピアスを見せびらかすように金髪を掻き上げれば、真っ赤になった真面目そうなメガネ女子が視界に入る。
ほーら、俺は魅力的。
ついでに、窓の外からコチラを振り返る花京院 要も視界に入る。
ほらほら、警戒しろよ?
でもって『あのイケメンとナニ喋ってた?』なんて彼女を問い詰めて、ケンカでもしちまえ…
ん? アレ?
俺を見てるワケじゃなさそう?
コージとユイ。
二人の野望の行く末は、まだまだ五里霧中といったトコロ。