花京院家の愛玩人形
要がユイを振り返る。
意外なことに、キョトン顔で。
「僕のカノジョ…
って、誰?」
素っ惚けやがってコノヤロォォォォォ!!
「前にアンタを校門まで迎えに来てた女よ!」
「あー…
紫信?」
名前を聞いたつもりはねェェェェェ!!
あぁ、イライラする。
ほんとムカつく。
「あの時だって、私の男を盗らないでねーって、わざわざ牽制しに来たンじゃないのォ?
自分が美人だって自覚してて、ちょっと顔出せば他の女は尻尾巻いて逃げると思ったンじゃないのォ?
ソレって立派な打算じゃないのォ???」
目論見が外れた鬱憤をブツけるように、ユイはほぼ面識のない紫信に対する悪態を吐く。
その、苛立ちに歪んだ頬と意地悪そうに尖った唇が…
「お生憎様ァ。
アンタ、カノジョに夢見す…ぎ‥‥‥」
言葉の途中で凍りついた。
重い前髪の隙間から突き刺さる、絶対零度の視線に気づいたから。
その眼差しに非難の色はない。
怒りの色もない。
ただただ、冷たすぎるだけ。
「紫信は僕のカノジョじゃないよ」
やはり非難の色も怒りの色もない静かな声音で、ただ冷たく要は言った。