花京院家の愛玩人形

「あー…
DV中年の『死せる生者の宝玉』ね。
アレ、やっぱヤバいよねェ…」


大きな手で肩を揉んで首をコキコキと鳴らし、深い溜め息と共に要はボヤく。


「紫信を治療してる間、工房に置いてたンだケド。
ずっと僕をガン見してたから。
追視なんてレベルじゃなかったから。
ほんっとやりにくかったわー…」


「ワカルワー…
アンナモン、ヨク アノ人形ニ入レル気ニナッタナ、オマエ。
執着ト執念ノ塊ジャネーカ。
人間コワイワー…」


「かなり偏執的だケド、愛とも言うからホント怖ェよ。
僕もイヤだったンだケド、あの壮絶な死に様見ちゃったら、最期の頼みくらい聞かざるを得ないでショ。
でも、そのおかげで君が紫信に近づけないってンなら、結果オーライかな」


いやいや。
怖ェのはおまえらだ。

ごみ山に向かって顔色も変えずにボソボソ喋るヤローと、ごみ山から聞こえる人ではあり得ない低い声とか、怖ェにもほどだ。

そして一番の恐怖は、自分のコトは棚に上げて他人を偏執狂呼ばわりしちゃう偏執狂だろう。

君のコトだよ?要クン。

だが色々とホラーシチュエーションのわりに、会話の内容は意外と友好的。

てか意外と仲良しなの?


「ねェ、君さ、もう紫信の目は諦めたら?
元はなんだか知らないケド、人間の肉体なんか諦めてずっと人形でいれば?
そしたら僕が、君の傷を治してあげるケド」


目元をフっと和ませて、柔らかい口調で要は言った。

おぉっと、ガチで友好的じゃん。

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