花京院家の愛玩人形
要は芝居がかった仕草で肩を竦めて両手を上げ、大袈裟に溜め息を吐いた。
鈍色の空が重さを増す。
雨足が強くなる。
「この世の何者も何物も、僕にとっては紫信と比べるには値しないから。
心から惜しいと思うケド、次は君を破壊する」
そう言って、濡れて雫を落とす髪を掻き上げた要の目は、もう和んではいなかった。
冷たく澄んでいた。
かと言って、ユイに向けた眼差しとは違う。
例えるならそれは、冷たく熱い氷の炎。
「クク… アハハハハハ!
俺ヲ破壊スルダト?
オマエノ冗談ハ 本当二面白イナ、少年!
オ手並ミ拝見ト イコウジャナイカ!」
言うコトを言って踵を返した要の広い背中に、『アレ』は余裕の嘲笑を浴びせる。
もう用はないからね。
振り返りはしないケドね。
ちょっとだけ言わせて。
「面白いのは君だと思うケド。
ごみが爆笑してるみたいだし」
「ハハ…ハ‥‥‥
ゥ…」
「後、早くソコ出たほうがイイと思うケド。
臭いが移るし」
「ゥー…
…
ソウスル…」
ナニソレ!?やっぱカワイイな!?
互いに嫌いなワケじゃなさそうだケド。
譲れないナニカのためには互いに敵同士なんだと思い知らせる、遠い雷鳴。