花京院家の愛玩人形
何も気づかず。
暗に示された事実に気づかず。
紫乃は困った顔でコトンと小首を傾げる。
「でも…申し訳ございません。
わたくしは、花京院様のお気持ちに応えることはできませんわ」
「知ってる。
ココのご主人が大反対しそうだし。
あの人、君の『お父さん』?」
「いいえ。
彼はわたくしの婚約者ですの」
「…
それは…知らなかった…
まじか…」
今度は要が青ざめた。
そりゃもう、デスマスクかってほど青ざめた。
青ざめ、片手で顔を覆い、ガクリと項垂れ…
「まじで、まじか…ボソボソ…
まさかあのオヤジ、中途半端に仕上げたままセクサロイドとして弄ぶつもりじゃ…ボソボソ…」
…
なんか喋ったケド、聞き取りにくいコト山の如しデスヨ、ハイ。
さらに困った表情になった紫乃が、要の顔を覗き込もうとさらに首を傾げる。
「あの…
よくわかりませんわ。
せくさろ…なんとかって、いったいなんですの?」
「ダッチワイフの進化形だケド、君は知らなくていいンですよ?
それより君、『婚約者』とはもう寝たの?」
ちょ… おいおい。
ソレは直球すぎンだろ。