花京院家の愛玩人形
なんだかんだと攻めあぐねている間に、もう梅雨は明けてしまう。
花京院 要が所属する美化委員が忙しい時期も、終わってしまう。
だから、最後の手段に出たワケですよ。
やたらブ厚い本を抱えて人気のない奥まったコーナーに向かう彼女の後を尾け。
本棚に近寄るタイミングを見計らって。
素早く姿を現し、いきなりの壁ド───ン!
『ただしイケメンに限る』と注意書がつく危険な作戦だが、この俺こそまさしくキラキライケメン男子なのだから、悲鳴なんて上がらない!
もう落ちろ。
女子が大好きなスイーツ(笑)シチュエーションとスイーツ(笑)口説き文句で落ちてしまえ。
徐々に距離を詰めていくと、大きなタレ目がさらに大きく見開かれる。
さぁ、俺に身を任せて…
「あら、コージ様。
肩に大きな毛虫が」
「ぅえぇ!?
まじ!? ドコ!?」
愛らしい声がもたらした衝撃情報に、本棚から手を離したコージは慌てて自分の身体を見下ろした。
肩? ドッチの?
あれ?
毛虫なんてドコにも…
狐につままれたようなキモチで顔を上げると、愛らしい声の主はもうソコにはいなくて。
少し離れた場所で、いつものようにニコニコと愛想笑いしていて…
「申し訳ありません。
見間違いだったようですわ」
…
まーたキレーに逃げられマシタYO!