花京院家の愛玩人形
紫信は人形。
愛でられるためだけに存在する、美しい人形。
だけどそんな彼女にも、秘密がある。
要には決して知られてはならない、大いなる秘密が。
おいおい、ちょっと人間らしいじゃん
って?
人形の秘密とか、ソレどんなん?
って?
知りたい?
じゃ、ちょっと彼女の生活を覗いてみようか。
紫信の朝は早い。
窓から陽射しが差し込む前に目を覚まし。
静かに、だが手早く身支度を整え。
キッチンに入り、要用の弁当作りと朝食の準備を同時進行でこなす。
花京院家に来た当初は手際も悪く、無駄に時間を費やし、似たようなメニューばかりが食卓に並んでいたが、今ではもう慣れたもの。
パパっと効率的に、和食洋食なんでもござれですよ。
要がキッチンに立つ隙なんて、なくなっちゃいましたよ。
上達っぷりがスゴいネ。
好きこそ物の上手なれって、ホントだネ。
食欲をそそる旨そうな匂いがダイニングをも浸食し始める頃、紫信は階段を上って自室に戻る。
そして、ベッドで眠る要を起こす。
なんでソイツ、ソコで寝てンの?とは聞かないで。
オトナの事情だよ。
寝ぼけ眼をこする要に、パリっとアイロンがけした白いシャツと洗顔用のタオルを手渡して。
再び階段を下りて、炊きたてのご飯を茶碗によそい、制服に着替えた要がテーブルに着くのを待って…
ハイ、いただきまーす。