花京院家の愛玩人形

熱く濃い食後のコーヒーを飲めば、要が家を出る時間。

エプロン姿で玄関まで付き添う自分を見下ろし、名残惜しそうにグズグズする要を笑顔で宥めすかして送り出すことも、もうお手のモノ。

さてココからは、一人キリ。

紫信は手櫛で髪をまとめ、頭の高い位置でひとつに結ってから…

まずは洗濯。

これは、そう手間はかからない。
大家族でもないから量も知れてるし。

それから、掃除。

コッチは結構大変。
そこそこ広い家だから。

それでも、一部屋一部屋、丁寧に。

掃いて磨いて、花を飾って。

叶の人形たちへの挨拶も忘れずに。

要の娘たちの部屋では、ちょっと一休みしてお喋りを楽しんだりもして。

そんなこんなで家中がキレイになると、時刻はもう昼過ぎ。

やっとランチタイムだ。

楽しい時間はあっという間に過ぎて…

ランチが済むと、紫信は急いで家を出る。

買い物をして、そのままいつもの図書館に直行して…

あれ?
もう学校帰りの要と合流しちゃった?

二人仲良く家に帰って。

要が工房にこもれば、編み物や繕い物、アイロンなんかの家事をして。

夕食を作って、食べて、片付けて、自室のロッキングチェアで読書に没頭して…

って、後は風呂入って寝るだけじゃん。

ベッドの中で微睡みながら、要が乱入してくるのを待つだけじゃん。

秘密なんて、ドコにありましたか?

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