花京院家の愛玩人形

ハイ、あったンですよ?
サラリと書き流された、ランチタイムの中に。

だっておかしいだろ。
ぼっちランチが楽しくて、あっという間に時間が過ぎるなんてさ。

要するに、ぼっちではないのだ。
誰かとランチを楽しんでいるのだ。

時間を巻き戻して、その場面をクローズアップしてみようか。

家中がキレイになると、時刻はもう昼過ぎ。

紫信はトレーに自分用のランチを乗せて、二階へ上がった。

あら?ダイニングでは食べないの?
うん、ダイニングでは食べないの。

お気に入りの自室で食べるの?
んーん、自室では食べないの。

辺りを用心深く見回しながら紫信が入ったのは、なんと要の部屋。

L字型のパイプデスクの前にあるチェアに腰を下ろし、今はもう慣れた手つきでノートPCを起動させれば…


「Ciao,belle!!」


なーんて、陽気な挨拶。

『やぁ、美しい人!』とか、挨拶っつーよりもはやナンパじゃねェか。


「おはようございます、優斗様」


「おはよう、紫信ちゃん。
おや、今日のランチも弁当の残りなのかい?
たまには贅沢すればイイのに」


「いいえ。
わたくしは、要と一緒がよいのですわ」


「いい嫁だねェ…」


ハイ、もうおわかりですね?

紫信のランチのお相手は、髭ダンディこと優斗サンでしたー

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