花京院家の愛玩人形
「ほんっと冷たいンだよ、要くんは。
仕事の話しかしてくれないしさー…
ひょっとして嫌われてるのカナ?私は?」
今日も優斗は、コーヒーを啜りながらそう嘆息する。
「まぁ、そんなことはございませんわ。
ただ…」
絶望的に相性が悪いの
とは言えない。
「要はご学業とお仕事の両立で、優斗様とゆっくりお話しする時間もないほどお忙しいのですわ」
今日も紫信は、穏やかに微笑みながらそう答える。
まぁ、嘘ではない。
「なら…仕方がないかなァ…
人形作家は要くんの天職だし…」
「えぇ、本当に。
先日、生まれたばかりのお嬢様を抱かせていただいたのですけれど、それはそれはお可愛らしかったですわ」
「彼の娘たちは本当に素晴らしいよね!
梅子さんの嫁ぎ先も、泣いて喜んでたしね!
ネーミングセンスには疑問を感じるケドね!」
あー…
やっぱソコは疑問なのね。
「で、どう?
紫信ちゃんから見て、要くんは人形作家の域を超越しそうかい?」
話のついで、とでも言うような何気ない調子で、トマトにフォークを刺した優斗が訊ねた。
うん、何気ない…
が、その声音に微かな緊張を感じ取り、紫信の箸はピタリと止まった。