花京院家の愛玩人形

人形作家の域を超越する、とは。

『人形師』になるというコト。

魂を宿した人形を作り出せるようになるというコト。

そして死した後、その目は魂を宿した人形に人間の命を与えることが出来る『死せる生者の宝玉』に…


「それはわたくしごときにはなんとも…
でも、お嬢様方が話しかけてきたことはまだ一度もないと、以前要は仰ってましたわ」


「ハっハー!それは残念!
でも、彼はまだまだこれからだしね!」


「優斗様は本当に、残念だと思っておられますの?」


「え?
それはもちろん!
そのー… もちろん…」


「本当かしら?」


「…


紫信ちゃんって、見た目おっとり系のクセして頭脳はシャープってタイプの人だったりするのカナ?」


「まぁ、とんだ買い被りですわ。
わたくしは何もわかっていない、世間知らずで愚かなお人形ですもの」


口をヘの字にして顎ヒゲを撫でる優斗と、虫も殺せぬ淑女の笑みを唇に浮かべる紫信。

もはや勝敗は明らかだ。


「うーん…
本音を言えば、残念だとは思ってない。
むしろ私はホっとしているよ。
要くんがまだ『人形師』じゃないと聞いてね」


敗れた優斗はフォークに刺したトマトを頬張りながら、モゴモゴと内心を吐露した。

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