花京院家の愛玩人形

「『人形師』になるコトは人形作家の最終目標であり、人間が勝手に定めたチンケな賞なんかとは比べモノにならないくらいの栄誉だ。
でもねェ…
その栄誉は、平穏な幸福とは直結しない場合もあるンだよねェ…」


「…
『人形師』は不幸だ、と仰いますの?」


「いやいや、幸せな生涯を全うした『人形師』もたくさんいたと思うよ?
でもねェ…」


あの優斗が。
いつも空気が読めないほど陽気すぎる優斗が。

眉を顰めて溜め息を吐く。

深刻そうだな、おい。

『死せる生者の宝玉』は、高値で取引される稀少品。

そのため、一攫千金を企む輩に狙われることもある。

その昔には、一人でいるトコロを襲われ、殺され、目を抉り出された『人形師』も…


「まぁ、今じゃ墓荒らしがイイトコだケドね。
殺されたほとんどが、『人形師』だと勘違いされた人形作家だったらしいし。
犯罪捜査技術が向上して検挙率が上がった現代じゃ、リスクが高すぎる賭けだから」


再び深い溜め息を吐き出して首を左右に振り、優斗は『人形師』の悲劇を締め括った。

そりゃ深刻だわ。

てかソレって、『人形師』だけじゃなくて…


「まぁ…
なんてことでしょう…
ただお人形を深く愛した罪もない『人形師』だけではなく、勘違いで命を奪われてしまった人形作家の方までいらっしゃるなんて…」


そう。
ほんとソレだよ、紫信さん。

とんだとばっちりデスYO!

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