花京院家の愛玩人形
「そーゆーとばっちり被害なら、私…というより、私の妻も被ってるからね、実際」
青ざめて震える唇を両手で覆った紫信に、優斗はさならる追い打ちをかける。
悲劇、まだあンの?
てか妻とか、そんな身近にあったの!?
「叶のコト、もう聞いてる?」
「えぇ、少しは…
でも… まさか…
叶様がお亡くなりになった原因は…」
「え?いやいや、違うよ?
私から叶を奪った憎き敵は病魔だ。
問題はその後。
親族はみんな日本だから、葬儀はソッチで執り行ったンだケドね。
なんと葬儀場に泥棒が入ったンだ」
「まぁ…」
「でもさ、そんな施設、当たり前にセ○ムしてるじゃない?
通夜だったから、私を含む遺族も当たり前にガッツリ詰めてるじゃない?
当たり前に取っ捕まって、なんて間抜けな香典泥棒だと思ったら、そうじゃなかったンだよ」
「まぁ… では…犯人は…」
「叶の兄弟弟子だった。
結婚前、大御所日本人形作家の元で技術を学んでいた頃の、ね」
「それでは… まさか目的は…」
「うん、まさかのお察し通り。
警察に『なんとかいう高価な宝石に変わった奥様のご遺体の目を盗みに入ったと容疑者は自供してますが、お心当たりはありますか?』なんて半笑いで聞かれた時には、ほんと頭が痛かったよ、私は」
現在進行形の頭痛を堪えるように、指でこめかみを押さえながら優斗は言った。