花京院家の愛玩人形
素直にランドセルを下ろして。
隣の席にちょこんと腰掛けて。
ついでに、床に着かない足をプラプラさせて。
その幼い仕草に笑みを深くした紫信を間近に見上げ、少年はさらに顔を赤くした。
「わたくしは紫信と申します。
あなた様のお名前も、教えていただけませんこと?」
「…
…
…///
タケル…」
「はじめまして、タケル様。
学校帰りでいらっしゃるのかしら?」
「…
…
…///
うん…
お…おまえは?カレシを待ってンの?」
おいおい。
『おまえ』呼ばわりか。
見るからに小学校低学年のクセして、『カレシ』なんて言葉がサラっと出ちゃうか。
だが許そう。
生意気とモジモジのコラボが、クっソ可愛いから。
「『カレシ』なんていませんわ。
わたくしは…そうですわね…
ご主人様を待っておりますの」
要とのちょっと普通ではない関係をどう説明したものかと、慎重に選んだ言葉を紫信は口にしたつもりだったのだが…
目を丸くしたタケルは、『ごしゅじんさま?』と呟いて少し考え込んでから、元気よく叫んだ。
「そっか、おまえ、『めいど』だな!?」
ハイ、誤解が生じマシタ。