花京院家の愛玩人形

「…
『タケル様』?」


振り返り、ランドセルが弾む小さな背中を見送って、長い前髪の奥の片眉をピクリと動かしたその男…

ハイ、言わずもがな。

要くんデスネ。

いや、いいケド
全然気にしてないケド
ガキとか、ほんとどーでもいいケド…

などとボソボソ呟きながら、毛先に緩くパーマをかけた肩にかかる黒髪を掻き乱し…


「アレ、誰?」


大股で紫信の傍に歩み寄った要は、薄い唇を尖らせて訊ねた。

気にしまくってンじゃねーかよ。

不満を全く隠しきれていない要を見上げ、紫信は可笑しそうに、うふふ、と笑う。


「先程初めてお話したばかりで…
わたくしもまだ、タケル様というお名前しか存じませんのよ」


「話した?
ナニを?どうして?」


「この間から、なぜかずっとわたくしを見ておられるものですから、声をかけてみましたの」


「は?ストーカー?」


「ふふ、まさか。
要ったら、あんなにお小さい男の子に妬いておられるの?」


「…


全然妬いてないケド」


妬きまくってンじゃねーかよ、おい。

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