花京院家の愛玩人形
「は?ナニソレ?
私の名前はユイよ」
流行の形に整えられた眉を顰めたもう一人の乱入者・ユイは、不遜に顎を反らして言った。
その敵意に満ちた眼差しに、紫信の細い肩がビクリと竦む。
「あ…
わたくし…」
「なんなの?バカにしてンの?
メイドなんてあり得ないっショ。
私は奴隷なの!」
「申し訳ございません…
そうとは知らず、とんだ失礼を…
え?んん?
‥‥‥奴隷?」
「そうよ!
この際ハッキリ言っとくケドね!
私、アンタに負けたなんて思ってないから!
そりゃアンタはご主人様の特別な女かも知れないケド、私だってご主人様唯一の奴隷なンだからね!」
「どうかお許しくださいませ…
わたくしも、ユイ様に勝ったなどとは微塵も思っておりませんわ。
でも… あの…
‥‥‥奴隷?」
「紫信が謝る必要はナイから。
この人、前からちょっと頭がアレなンだ」
怯え戸惑う紫信の耳に、要がそっと囁いた。
それから、一歩進み出て彼女を背に隠し、無表情でユイに向き直る。
「紫信に妙なコト吹き込まないで。
てか、紫信に絡まないで。
僕は君を奴隷にした覚えなんてないし、大体、メイドはあり得なくて奴隷ならアリとか、どんな線引きなの?
バカなの?」
ご尤も。