花京院家の愛玩人形
「つまり皆様は、親しいご友人なのですわね」
口元に手を当て、しとやかに微笑んで紫信は言った。
けれど…
「…
違うから」
ハイ、完全否定。
ゆっくりと振り返って紫信を見下ろし、要は情けなく眉尻を下げる。
「親しいとか、ほんっとナイから。
コイツらは頭がアレなストーカーだから。
一学期の終わりくらいからずっとつきまとわれてて、『師匠』とか『ご主人様』とか身に覚えのないコトばっか言われて、それでも夏季休暇を挟めば飽きるだろうと思ってたのに…」
どんな肺活量?とツッコみたくなる長───い溜め息を吐き出した後…
下がっていた眉がキリリと上がる。
ついでに、落ちていた肩も上がる。
そして要は、力強く宣言を。
「もう限界だ。
僕は学校を辞める」
…
力強く、逃げの一手かよ。
でも、イイの?
だって高三なンでショ?
後半年もすりゃ卒業なンでショ?
勿体なくない?
仕事もあるし、困らないといえば困らないだろうケドさー…
そりゃナイっスわ、師匠ー、とか。
ご主人様ァ、私を捨てないでェェェ!?とか。
ご友人も止めてくれてるよ?
まぁ、そのご友人が原因なワケだケドも。