花京院家の愛玩人形
要は食材が詰まったビニールバッグをいつものように紫信から奪い取り、身軽になった彼女の腰を抱いてスタスタと歩き出す。
『図書館では静かにしてください』
なんて小学生レベルの注意を受ける前に、この場を撤退するのは賢明だと思うケド…
コージとユイの辞めないでコールは完全スルーの方向デスカ。
ソーデスカ。
自動ドアをくぐる。
なんか喚きながら二人がついてくるケド、無視、無視。
容赦なく日が照りつける道路に出る。
なんか喚きながらまだ二人はついてくるケド、無視、無視。
徹底無視。
スゴく控えめに、ツンツンと長袖シャツの袖を引かれても…
…
コレは無視できねーな。
要は足を止め、隣を見下ろした。
すると、紫信さんが。
眉をハの字にした、可愛い紫信さんが。
「本当に、学校をお辞めになってしまわれるの…?」
などと、幼く頼りなげな声でのたまった。
「…
なんか不満?」
「要のなさるコトに、不満なんてあるはずがございませんわ。
ただ…
わたくし、毎日図書館で待ち合わせするのが、楽しみだったものですから…
本を読んで、たまに窓の外を眺めて、要を待つ切ないような甘酸っぱいような時間が、その…なんと申しますか…」
ナニソレ、ぐうかわ。