花京院家の愛玩人形

一緒に住んでて、毎日イヤってほど顔合わせてて、今更ナニ言ってンの?

なーんて無粋なコトは言いっこナシ。

情緒の問題なンだよ。

『図書館で学校帰りの想い人を待つ』とか、純文学を愛する少女が大好物なシチュエーションなンだよ。

けれど、紫信は言う。

申し訳なさそうな、少し寂しそうな、庇護欲刺激し放題の儚い微笑みを見せて。


「ごめんなさい。
ただの我がままなのですわ。
どうかお忘れになってくださいまし」


ハイ、あざとい。

だから、要は言う。

頬を染めて、柄にもなく上擦った声で。


「よし。
学校を辞めるのはよそう。
切なく甘酸っぱい、僕と君との図書館逢瀬を続行しよう、そーしよう」


ハイ、チョロい。

惚れた弱みがあるにしたって、弱すぎンだろ。
もはや最弱だろ。

それに…


「え… でも…
あの方々はよろしいの?」


要の突然の前言撤回に目を丸くした紫信が、肩越しにチラリと後ろを振り返りながら訊ねた。

ソコには、二人に追いついてきたコージとユイが。

師匠、師匠、ご主人様、ご主人様、と、辞めないでコールを未だしつこく繰り返しているコージとユイが。

そう。
ストーカー問題は、ナニ一つ解決してませんからね?

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