花京院家の愛玩人形
「ん?ぎ…ぎむ?ってなんのコト?
おまえ、ナニが言いたいンだよ?」
「じゃ、簡潔に言うケド。
昨日、すぐ隣の通りで、紫信が包丁を持った男に襲われた」
「えっ!!??」
首を捻りつつも精一杯要を睨みつけていたタケルの目が、まんまるく見開かれた。
それから、警戒心も敵意も忘れて要にまろび寄り、胸の前で組まれたままの腕を小さな手で掴んで揺さぶる。
「紫信はっ!? ケガしたのかっ!?
まさか…死ん…」
引きつり青ざめた、そのちょっと生意気そうなカワイイ顔には、紫信に対する純粋な思慕と心配以外の感情は伺えない。
「…
勝手に殺さないで。
未遂だったから、怪我もないよ」
切れ長の鋭い目でタケルをジっと見下ろし、要は静かに言った。
「みす…い???」
「『未遂』って、ほら、アレ。
襲われたケド、寸前でセーフ!的な?」
「寸前で私が助けた、的な?」
再び首を捻ったタケルの耳元で優しい解説を囁いたのは、小一時間お口チャック令を出されたコージとユイだ。
いつの間にか持ち場を離れてやってきて、タケルを両側から挟んでやがるよ。
金髪チャラ男と睫毛バサバサ今時女子が、小学校低学年男子の身長に合わせてしゃがみ込み、手で口を隠しながらコソコソしてやがるよ。
ナニ?このシュールな絵面。