花京院家の愛玩人形

「あー…
僕が紫信を襲った奴を捜しているという前提を君に理解してもらった上で、最初に戻ろうか。
君と紫信が、ココで会ってるコトなンだケド」


「ぜんて… まぁイイや。
うん、それが?」


「君の意志なの?」


「へ?」


「それに君、やけに紫信の個人情報を知りたがってたそうだケド。
なんのため?
それも君一人の意志?」


「なんのためって…
え…
まさかおまえ、オレがやったと思ってンの!?」


尋問めいた口調の中にある自分への疑惑を敏感に感じ取ったタケルは、顔を真っ赤にして喚いた。

けれど、足を踏み鳴らすタケルを気にも留めず、要は淡々と先を続ける。


「それはまさかでショ。
でも、無関係ではなさそうだと思ってる。
情報を得ようとして、でも結局得られなくて、君が紫信について唯一知っているこの場所の近くで、彼女は襲われたから」


図書館の壁から離れる、広い背中。

腕を組んだまま、屈められる長身。

グっと寄せられた、目の前で見れば日本人形のように端正な顔…


「君さー…
誰かに頼まれて、紫信に近づいたンじゃない?
ソイツ、誰?
君はソイツに、ナニを喋った?」


間近に迫った鋭い双眸に射竦められ、タケルは怒りも忘れて息を飲んだ。

この男は、本当にコワい人かも知れない…

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