花京院家の愛玩人形

父親のようにゲンコツを落としたり、母親のように大声で叱ったりしないケド。

ジ○ジョみたいに顔が濃くないし、マッチョじゃないし、スタンドも出さないケド。

この男は、本当にコワい人かも知れない。

タケルは焦った。

焦ったついでに、口を滑らせた。


「ダレにも頼まれてない!
ダレにもナニも喋ってない!
でも、たとえ喋ったとしても、コーヅキ先生は紫信を襲ったりしない!!」


ハイ、いただきマシタ。


「あー… そう。
コーヅキ先生、ね」


タケルを至近距離で見下ろしたまま、要は目を細い三日月型にして笑った。


「なぁっ!ほんとだぞっ!
オレ、なんも頼まれてねーからなっ!」


「ふーん?」


「先生はな!
紫信の絵を描いてたンだ!
きっと紫信が好きなンだ!」


「へー?」


「だからオレ、紫信が暇な時に学校へ連れてって、先生に会わせてやろうと思ってたンだ!
先生にはまだ内緒なンだ!
まだなんも言ってねーンだ!」


「ほー?」


「ほんとだって!!それだけなンだって!!
へーホー言ってねェで、ちゃんと聞いてよぉぅぉぅぉぅ…」


あーらら、とうとう泣かされちゃった。

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