花京院家の愛玩人形
Ⅰ
最寄りの駅前に、その男は現れた。
「スンマセン、ちょっとお時間」
「急いでますので」
私は素っ気なく男の言葉を遮り、足も止めずに歩き続けた。
追ってくる様子はない。
宗教の勧誘や、募金要請の類だろう。
最寄りの駅前にあるクリーニング店の看板の陰に、『アレ』は現れた。
追ってくる気配はない。
が、おそらく見つかった。
『アレ』の目的はわかっている。
度々立ち寄るスーパーマーケットに、また男は現れた。
「スンマセン、ちょっとお時間いいデスカ?
いつもお宅の二階の」
「急いでますので」
私は素っ気なく男の言葉を遮り、足も止めずに歩き続けた。
追ってくる様子はない。
だが…
お宅?お宅って言った?
なんでウチを知ってンの?
自宅の住所をリサーチした挙げ句の宗教勧誘や募金要請なんて、聞いたコトないよ?
男の目的がわからなくなった。
度々立ち寄るスーパーマーケット前にある電柱の陰に、また『アレ』は現れた。
追ってくる気配はない。
が、確実に迫ってきている。
『アレ』の目的はわかっている。