花京院家の愛玩人形
「え…」
「窓から外を眺めてはいなかった。
大人しくこの部屋にいた。
だが… 男を招き入れていたね」
「あ…
見ていらしたの…?」
「見ていたよ、全部」
「ごめんなさい、信太郎さん。
でも、不義を働いたわけではないのです。
わたくしはただ」
「知っているよ。
全部見ていたと言っただろう?
紫乃のコトなら、私はなんでも知っているよ」
「信太郎さん…」
「悪いのはあの男だ。
目的を隠して、紫乃に近づいてきたンだろう?
興味を惹くモノをチラつかせて、紫乃を懐柔したンだろう?」
「っ!?
それは違います!!」
「あぁ、わかっている。
紫乃にだっていけないトコロはあったね。
外出などできない身体なのに、他人に見られてはいけない身体なのに、外の世界に触れようとしたなんて」
「何を…仰ってますの…?」
「だが、もういいンだよ。
喜んでおくれ、紫乃。
やっとキャンピングカーを手に入れたンだ。
思っていたより広いし、内装もなかなかだ。
紫乃もきっと気に入るよ。
この家の片付けや家具の処分は業者に頼んだから、すぐにでも出発できる。
すぐにでも『アレ』から逃げられる」
「逃げる、ですって…?
本当に…何を仰ってますの…?」