花京院家の愛玩人形


もう恒例ですヨ、ハイ。
窓は叩かれた。

コンコンっ



あら?
カーテンが開かない。

外出中…いや、ソレはないだろう。
ナニカの用で、別の部屋にいるのカナ?


(勝手に入って、待っとくか)


不安定な梯子から手を離した要は、今日も彼を待ち侘びていたかのように鍵のかかっていない窓を勝手に開けた。

すると…


「入ってはなりません、花京院様。
どうかお帰りになって」


と、消え入りそうな紫乃の声。

あら?
いたの。


「都合悪いなら今日は帰るケド。
体勢がヤバいから、とりあえず一回入れて?
落ちたら僕、死ぬかも」


「いいえ、いいえ、入ってはなりません。
どうかそのままお帰りになって」


「…
どうかしたの?
てか、ドコにいンの?」


いつもと違う紫乃の様子に眉を顰めた要は、照明も点いていない薄暗い室内を見回した。

彼女と同様、部屋の様子もいつもと違う。

テーブルから払い落とされたのか、床に乱雑に散らばる単行本。

横倒しになった木の椅子。

そして、いつもは几帳面に整えられているベッドのシーツが、小さく盛り上がっていて…

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