花京院家の愛玩人形
その通りだね。
義手や義足など欠損部位を補う手段はあるが、それでは元通りとは言えないものね。
だけど…
「医者じゃない。
僕が、出来るンだ。
僕が人形作家で、君が‥‥‥人形だから」
「え…?」
確信と苦渋に満ちた低い声に導かれた紫乃が、再びシーツからヒョコっと顔を出す。
そして目を瞬かせ、コトンと首を傾げた。
「なんですって?
わたくしが…なんですって?」
「君は人形だ」
骨ばった大きな手が、床に転がっていた紫乃の足を恭しく拾い上げる。
「ごらん?
君の膝だよ」
歩みを進めてベッドに腰を下ろした要は、手にしたソレの関節をそっと曲げ、紫乃の目の前に差し出した。
「継ぎ目と、その中にある球体のパーツが見えるだろう?
肌だって、滑らかできめ細かいが、硬いだろう?
近くで見れば、君と人間との違いは明らかだ」
「…」
「『婚約者』が外出を許さなかったのは、君が人形である事実を君自身と世間に知られたくなかったからだろう。
だからたとえ旅に出たとしても、今度は車の中に閉じ込められるだけだと思う」
「…」