花京院家の愛玩人形
だが、ソコには誰もいない…
はず?
「どーせ出掛けたフリして、その辺でデバガメしてンでショ?
それとも盗聴器なんて悪趣味なモンでも仕掛けてあンの?
ドッチにしろ、聞いてンなら返事しなよ」
「私に悪意なんてあるはずないだろう。
紫乃は人間なのだから」
ぅわぁ…
ほんとにいやがったよ、デバガメ信太郎。
ドアの向こうから聞こえたくぐもった声に、紫乃は瞬時に正気を取り戻して息を飲み、要は思い切り眉を吊り上げた。
「いやいや、もはや悪意しかねェじゃん。
人間だって言うなら、最初から両目を揃えてやれよ」
「花京院様…」
「悪意があるのはおまえだろう?
紫乃が持つ『死せる生者の宝玉』を盗むつもりなンだろう?」
「違うから。
『死せる生者の宝玉』をもう一つ捜すのに協力するって。
性格はアレだケド腕だけは信用できるディーラーに、もう声をかけたって。
僕、アンタに手紙書いたよね?
読まなかったの?
読めなかったの?
日本語が不自由な人なの?」
「花京院様、花京院様…」
「高額で取引される稀少品をただで譲ると言われれば、誰だって裏があると思うさ。
それに、もう必要ないンだ。
紫乃は今の紫乃で完成形なンだ。
私だけの傍にいて、私だけを見て、私だけを愛する、私だけの理想の女なのだから」
おっと、コレは鬼畜。