花京院家の愛玩人形
数日後、まーた男は現れた。
ドコに?って?
家の前だよ!
門扉にもたれかかって、私の帰りを待ってやがったよ!
住所がわかったからって、ホントに突撃しちゃうか、コノヤロー!?
「いい加減にしてください。
通報しますよ」
今回ばかりは、私から男に声をかけた。
面識のない男が、突然自宅に押し掛けてきたのだ。
当然の対応だろう。
だが、険しく眉を顰める私に…
「あー… スンマセン。
話がしたいだけなンですよ。
ちょっとお時間いいデスカ?」
男は門扉に背を預けたまま、これっぽっちも悪びれることなくボソボソと言ってのけた。
…
よし。
まじで通報しよ。
私はジャケットの内ポケットからスマホを取り出した。
けれどロックを解除しようとする私の手は、すぐさま動きを止めることとなる。
「いつもお宅の二階の窓際で、外を眺めてるコのことなンですケド」
などという低い声が、耳に入ったから。
驚いて顔を上げると、ヤローにしては華奢な長い指で賃貸一戸建ての我が家を指す男。
その指が示す先には、風が通る程度に薄く開いた出窓。
そして…
揺れるレースカーテンの奥の、小さな人影…