花京院家の愛玩人形

「えぇ!
お望みなら、こんなモノいくらだってくれてやりますわ!」


喘ぐように叫んだ紫乃は、手元にあった右足をも掴んで勢いよく放り投げた。

見事出窓にヒットしたソレが、ガラスもろとも粉々に砕け落ちる。


「およしになってと、あんなにも申し上げましたのに…」


ずるり…

紫乃がベッドから滑り降りる。


「どうしてわたくしの話を聞いてくださらないの…?」


ずるり…

ずるり…

紫乃が床を這う。


「どうして?
どうして?
どうしてなの?信太郎さん‥‥‥」


ずるり…

ずるり…

ずるり‥‥‥

一本しかない腕で。
一本しかない足で。

蠢きながら迫り来る、命ある少女と見紛うばかりに精巧な、片目に闇黒を孕んだ世にも美しい人形…

ってナニコレ、KOEEEEEE!!??


「ヒィっっっ!!??」


自らの所業故の結果にも関わらず、信太郎は恐怖に彩られた悲鳴を上げた。

なのに、ねー?

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