花京院家の愛玩人形
の、はーずーなーのーに───!?
信太郎は廊下に倒れたまま動けずに…
「殴ったね…
親父にもぶたれたコトないのにィィィ…」
などと涙目で呻いていた。
要は殴った拳をもう片方の手で押さえて身を屈め…
「予想より痛いンですケド…
僕の手が…
人形を愛でるためだけにある、僕の手がァァァ…」
などと涙目でボソボソと呻いていた。
この、ポテンシャルは申し分ないクセに、まともに喧嘩もしたことないもやしっコ共め。
とは言え、先に復活したのはやっぱコッチ。
「アンタも痛みを知るべきだ。
アンタが彼女に負わせた傷の、100万分の1にもならないだろうケド」
長い前髪を掻き上げて背筋を伸ばした要は、現れた切れ長の目で冷ややかに信太郎を見下ろした。
それから再び身を屈め、唖然とする紫乃の、腕と一緒に引きちぎられたワンピースの袖口を長い指でそっと撫でる。
「待ってって言ったのに、なんて無茶を…
いや、ごめん、全部僕が悪い」
「これはいったい…
あの…花京院様?お身体の具合は?」
「君が窓を割って換気してくれたから、もう大丈夫。
てかそもそも、指先なんかはかなり痺れてたケド、全く動けないワケじゃなかったンだ。
用意周到に罠まで仕込んでたあのオッサンの裏をかいてやろうと思って、嘘ついたンだケド…
そのせいで、ますます君を傷つけてしまったね。
本当にごめん」