花京院家の愛玩人形
「話すコトなどない!」
私は声を荒らげ、男を振り切って家に入ろうと…
したが、無理だった。
だって門扉は男の背に押さえられている。
ナニソレ?
最初っから、通せんぼする気でソコに立ってたの?
今日は逃がす気ないってコトなの?
「あのコに会わせてもらえませんかネ?」
通せんぼしたまま、ボソボソと男が言う。
早く家に入らなければ。
男を押し退けて。
「僕、あのコと仲良くなりたいンですよ。
なんつーか、こう… 情熱的に?」
またボソボソと男が言う。
そのボソボソ、情熱って言葉とは対極にあるっての!
押し退け…られるか?
男は細身だが、かなりの長身。
それに、なんと言っても若い。
比べて私は40半ばの中年男。
実力行使は難しそう…
「アンタだって、僕と仲良くなって損はないと思うケド。
知ってますよ。
あのコにはまだ、『死せる生者の宝玉』が一つしか」
「帰れ!!!」
自分でも驚愕するほどの怒声が、私の口から迸った。
同時に、力もまた。
私は男を突き飛ばし、家の敷地に駆け込んだ。