花京院家の愛玩人形
「『また』とか『もう一度』とか。
そーじゃないでショ?
アンタを裏切って捨てたのは、ソコに昔のアンタと写ってる『紫乃』だ。
今ココにいるのはアンタの『紫乃』じゃない。
アンタだってもう、その頃のアンタじゃない」
写真に見入って項垂れる信太郎に、要は真実を突きつける。
そう、まさに真実。
だって信太郎の隣で微笑む『紫乃』は、鎖骨のラインにも肘にも継ぎ目なんてない、普通の人間で。
信太郎だけが年齢を重ね、紫乃の時は止まっていて。
それに…
ねェ?
殺したって、言わなかった…?
「ハ… ア───ハハハハハハハハハハ!!」
信太郎が笑う。
「あぁ、紫乃だ!
紫乃は紫乃だ!ハハっ私の紫乃だ!
何度だって私が蘇らせてやる!!!」
頭を反らして天井を仰ぎ、狂ったように笑う。
「あー…
コレもうダメだ」
嘲るような半笑いで、要はボソっと呟いた。
どうにかしないといけないが、もうこのイカレ中年はどうにもできない。
確かにまだ身体は万全じゃないケド、梯子での脱出にチャレンジするしか手はねェか。
信太郎が握りしめるライターに視線を送ってから、ガラスが割れた出窓を振り返った要は…
「あれ?君は…」
ソコに浮かぶナニカに向かって声をかけた。