花京院家の愛玩人形
Ⅵ
浮かぶ…
浮かぶ?
ソレは表現としてオカシくね?
でもね?
ホントに浮かんでンの。
足場なんてない、出窓の外側に浮かんでンの。
紫乃もソチラを見た。
信太郎もソチラを見た。
宙に浮かぶナニカを、見た。
姿も大きさも、ちょうど5才児くらいの幼い体型にオフホワイトの豪華なドレスを纏った。
ふっくらしたバラ色の頬とあどけない表情が、なんとも愛らしい。
なのに二つの眼窩は空洞で、その代わりのように金の巻き毛の左上部に剥き出しの眼球を一つだけ飾ったビスクドール‥‥‥
ってナニコレ、ますますKOEEEEEE!!??
両目がないこと以外はマジ天使な風貌ってトコロが、また絶妙にKOEEEEEE!!??
「ギャァァァァァ!!??
来たァ!!??
『アレ』が来たァァァァァ!!??」
信太郎は狂った哄笑を絶叫に変えた。
「ま…」
紫乃は目を見開いて絶句した。
「惜しいよね。
ビジュアルは、充分愛でる価値があるのに」
要は首を左右に振って嘆息した。
君のリアクションは、やっぱ常人には理解出来ないよ、変人クン。
「アァ、来タゾ。
シバラク前カラ 来テイタゾ。
モウ少シ 滑稽ナ人間模様ヲ 高見ノ見物シテイタカッタガ…
『死せる生者の宝玉』ヲ 燃ヤサレテハ困ル」