花京院家の愛玩人形
(思った通りでよかったわ…)
なんとなくニヤニヤ笑っているように見える『アレ』をチラリと見上げ、紫乃は軽く息をついた。
『アレ』が欲しいのは、自分だけ。
自分が持つ、『死せる生者の宝玉』だけ。
他をどうこうするつもりはない。
少なくとも、今のところは…
「ナニやってンの!?
早く掴まって!!」
「これでよいのです!」
差し出された要の大きな手から顔を背け、紫乃は決然と叫んだ。
「よいワケねーだろ!
手ェ出して!」
要が紫乃の右腕に手を伸ばす。
「よいのですと言ったら、よいのです!
あの方の仰る通り、盗んだ物はお返しするのが筋というものですわ!」
紫乃が上半身を反らし、その手を避ける。
「筋なんてクソ食らえだから!
その目を返したら、君は死んじゃうから!
わかってンの!?」
要が紫乃のワンピースについた、腰リボンに手を伸ばす。
「わかっておりますわ!
わかった上で、これでよい、と申し上げているのです!」
紫乃が下半身を捻り、その手を避ける。
伸ばして、避けて、伸ばして、避けて…
なんの攻防だ?コレ。