花京院家の愛玩人形
「かかかか花京院様!?
ななナニを考えておられるの!?」
「君が死んだら僕も生きてはいけないって、前に言ったでショ?
どうせなら一緒に逝こうと思って」
「なっ!?
お気は確かですの!?」
「確かですよ?
君と二人なら心中も悪くない。
あ、君は責任なんて感じなくてイイから。
要するに、コレは僕の自己満足だから」
あぁ~あ~♪
シンジュー、シンジュ―、甘美な響き~♪
なんて、満足そうな顔で調子っぱずれに歌いだす要。
真っ平ですわっ お放しになってっ
この…この…変人っ
なんて、彼女の口から出たとは思えない悪態を吐きながら、ドスドスと要の脇腹に右肘を打ち込む紫乃。
まぁ、そんなんじゃ逃げられないケドね。
非力そうだし。
加えて現在、パーツが足りてないし。
そもそも、二人とももうずいぶん沈んじゃってるからネ。
深く、深く。
獲物を飲み込む、澱んだ奈落の口。
それでももがき続ける紫乃を、信太郎は見つめていた。
必死で運命に抗う紫乃を、茫然自失で見つめていた。
彼女は…こんな女だったっけ?
視線を落とせば、指先に触れる古い写真の中で微笑む『紫乃』。
優しくたおやかで、それから…
それから…
(彼女は…誰だ?)