花京院家の愛玩人形
え?
買い忘れを思い出して、スーパー行った?
いやいや。
まな板の上に生肉出しっパでは行かないだろ。
まさか、愛想尽かして逃げちゃった?
いやいやいやいや。
なら、そもそもメシなんか作ンねーって。
紫乃の両親に居場所がバレた。
そして、連れ戻された。
コレが正解だろ。
私はすぐさま二人の愛の巣を捨て、紫乃を追った。
彼女はおそらく実家にいるだろう。
しばらくは見張りをつけられ、外出も許されないだろう。
もちろん、連絡手段も断たれているだろう。
さぁ、どうする?
通報上等で屋敷に忍び込むことも考えたが…
短絡的な行動は、もう慎むべきだ。
連れ去って、見つかって、連れ戻されて、の繰り返しになってしまう。
私と紫乃は、短い期間とはいえ夫婦同然に暮らし、心どころか既に情をも交わした仲。
もう、以前彼女の両親が言った『恋という幻想に酔っているだけの、一時的な気の迷い』などではない。
それを真摯に説き、理解を求めよう。
時間はかかるかもしれないが、きっと紫乃は待っていてくれる。
幸せだった二人の時間が、その思いを確かなものにする。
今度こそ、今度こそ。
誰からも認められて、誰からも祝福されて、生涯一度と思える激しい恋を成就させるのだ…
などと意気込んではみたものの、それは当然の如く険しい道。
話がしたいと紫乃の父親がいるオフィスを訪ねた私を待っていたのは、徹底的な門前払いだった。