花京院家の愛玩人形
いやいや…
えぇ?
いやいやいやいや…
ナンダ?コレ。
サッパリ意味が飲み込めず、私は紫乃の手紙を何十回も、何百回も、貪るように読み返した。
夜がきて、やがて朝がきても、一心不乱に読み返し続けた。
ナニガドーシテコーナッタ?
狭く何もない部屋も、案外不便はないって言ったじゃない。
初めての家事も、あんなに頑張ってたじゃない。
二人ならなんだって乗り越えていけると笑ったのは、君だったじゃない…
あ、コレ、偽の手紙か。
私を諦めさせようって罠か。
…でも、間違いなく紫乃の字だし。
あ、なんか暗号が隠されてンのか。
まさかの縦読みか。
…でもこの手紙、そもそも縦読みだし。
もう認めざるを得ない。
手紙は正真正銘、紫乃が書いたモノ。
紫乃から私への、決別宣言。
だが…
本心ではないンだろう?
咎められて、責められて、命じられて。
私との別れを受け入れるしかなかったンだろう?
君は今も、私を思って泣いているンだろう…?
私は居ても立ってもいられず、不憫な紫乃の元に駆けつけた。
そんな私が目にしたモノは…
両親に付き添われて屋敷の門をくぐる、美しく着飾った紫乃。
待っていた高級車に、知らない男にエスコートされて乗り込む紫乃…