花京院家の愛玩人形
「『一応は』って言ったのはね。
元々あった君の左目が『死せる生者の宝玉』のままだから。
たぶんあの両目のないビスクドールがまだ生きていて、その目の所有権を主張し続けているコトが原因だと思う。
そのせいで、君は永遠に姿形が変わらない。
人間の肉体を得たにも関わらず、人間とは違う時の流れの中にいるンだ」
「…」
「あ、でももう、『盗んだモノは返すのが筋』なんて言わないで。
あんなヤバいのが生身の肉体なんて手にしちゃったら、きっとロクなコトになンないから。
次に会ったら完全に焼却して目を放棄させるのが、君にとっても世の中にとってもベストだから」
「…いえ、そのことではなく。
どうしてわたくしを人間になさったの?」
紫信は波打つ栗色の髪を揺らしてコトンと首を傾げた。
その、どこかぎこちなくあどけない仕草は、人間になった今も以前と少しも変わらない。
「僕は君の全てを尊重し、全てを肯定する。
だから、外の世界に行きたいという君の願いを叶えた。
それだけのコトだケド?」
なんだそんなことかとでも言いたげに、要は造作なく答えたが…
紫信は首を傾げたまま。
てか…
ねェ、乳首。
髪の位置が変わったせいで、見えそうで見えなかったピンクの乳首がコンニチハしてっから。
「でも…花京院様がお好きなのは、お人形であるわたくしでしたでしょう?
人間になったこの身では、お気に召さないのでは?」
顔を出したカワイイ乳首を気にするコトなく、紫信は問う。