花京院家の愛玩人形
瞳は乾かない。
それでも、やっと、笑ったね。
「僕が何をしようとも、君があの男を忘れることはない。
刻まれた愛の記憶は、決して消えない。
人形って、きっとそういうものだ」
「…」
「でも、あの男よりも強く、深く、優しく、僕が君を愛でるから。
誰よりも君を愛でるから。
だから君もいつか、誰よりも僕を愛してくれないか?」
「…
せっく…なんでしたかしら?
は、よくわかりませんけども…」
泣き笑いで歪んだ顔すら美しい人形の細くしなやかな腕が、首に絡みつく。
慎ましやかに、おずおずと。
「花京院様のお好きに愛でてくださいませ。
誰よりも強く、深く、優しく。
そうすればわたくしも、誰よりも花京院様を愛するでしょう。
お人形って、きっとそういうものですわ」
愛でてくださいませ、だって。
その調子。
もっと強請ってよ、愛を。
もっと強請ってよ、僕を。
折れそうな身体を抱きしめたまま押し倒せば、ソファーベッドがギシっと音を立てて軋む。
羽根が唇を掠めるようなバードキスが、口腔までも貪るような激しい口づけに変われば、乱れた吐息に艶めいた水音が混じる。
それから、重なる鼓動と途切れ途切れの嬌声。
望むままに与えよう。
僕が。
全てを。