花京院家の愛玩人形

「一人だよ。
もう結構長い。
料理もそこそこ出来てるでショ?」


ブラックコーヒーを一口啜って、要は得意げに微笑んだ。

うん、得意になるのもわかるよ。

バケット、ポーチドエッグを添えたアスパラベーコン、クレソンとトマトのサラダをバランスよく盛りつけたワンプレートディッシュは、お手軽ながらもカフェ仕様だ。


「えぇ、とても美味しいですわ。
いつもご自分で作っておられますの?」


「時間に余裕がある時は。
忙しいと、コンビニが命綱になるよ。
洗濯はなんとか頑張ってるケド、掃除や庭の手入れはハウスキーパー頼みだし。
これがヤローの限界だよね」


「まぁ…
ではこれからは、わたくしがお手伝いいたしますわ」


「えっ!?」


要はコーヒーカップを持ったまま固まった。


「え?」


紫信もフォークを持ったまま固まった。

時間が凝縮したかのような沈黙の後、おずおずと口を開いたのは…


「わたくしったら…
差し出たことを申し上げましたわ。
ごめんなさい、どうかお忘れになって」


長い睫毛をそっと伏せた、紫信だ。


「ご迷惑ですわよね。
確かにわたくし、家事の経験は要よりも浅いですし。
それより何より、ずっとコチラでご厄介になるわけにはいきませんもの」

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