花京院家の愛玩人形
コンコンっ
と、カーテンの向こうで窓を叩く音。
…ノック?
そんなはずはない。
ココは一軒家の二階なのだから。
風じゃなければ、きっと気のせい。
少女は読んでいた単行本に視線を戻した。
コンコンコンっ
と、カーテンの向こうで窓を叩く音。
…
風でも気のせいでもないデスネ。
状況をキチンと把握しましょう。
『階段どころかベランダもついていない二階の出窓を、外から誰かがノックしていマス』
近所の子供が、雨樋を伝って上ってきてしまったのだろうか。
(ケガでもしたら、大変だわ)
少女は本に栞を挟んでテーブルに置き、少しぎこちない動作で椅子から立ち上がった。
歩み寄り。
手を伸ばし。
そしてピタリと動きを止める。
窓を開けてはいけない
窓に近寄ってはいけない
外を見てはいけない
(でも… わたくしは…)
少女は空中で迷っていた手をキュっと握りしめた後、勢いよくカーテンを開け放った。
ソコには子供が…
他所んチの雨樋を登り、うっかり降りられなくなったイタズラな子供が…
いないネ。
代わりに、知らない男がいるよネ。