花京院家の愛玩人形
突如として思い及んだ自らの身の振り方に不安を覚えて睫毛を震わせながらも、紫信は気丈に微笑んでみせる。
そう。
もう何だって自分で出来るし、何だって自分でしなければならないのだ。
自立の時は、今…
「どうして、ずっとコチラでご厄介になるわけにはいかないの?」
「え…」
希望と決意と不安の狭間で揺れる紫信の思考に割り込んできたのは、不機嫌丸出しの低い声。
視線を上げれば、テーブルの向こうには不機嫌丸出しで眉根を寄せる要。
「どーゆーコト?
他に行く宛あるとか?
他にも『婚約者』がいるとか?」
「まさか。
そんなはずありませんわ」
「そう?
じゃ、僕のことが嫌いとか?」
「まさか。
嫌いなはずがありませんわ」
「そう?
じゃあどうして、ずっとコチラでご厄介になるわけにはいかないなんて言うの?」
「それは…
だって、ご迷惑でしょう?」
「君が、ずっと、ココにいることを、僕が迷惑がると思ってるの?
それこそまさかでショ」
眉間の皺を解除した要は、首をフルフルと左右に振って深い溜め息を吐き出した。