花京院家の愛玩人形
Ⅱ
吹き抜けになっている玄関ホールの奥にある階段を上がると、ソコはプライベートスペース。
「ココを君の部屋にしようと思うンだケド。
陽当たりもいいし、前の部屋と雰囲気が似ているから、落ち着くだろう?」
真鍮のドアノブがついた木のドアを開けた要は、紫信の腰に軽く手を当ててエスコートしながら言った。
どーでもいいケド、絵面がオカシィ。
要は無駄にデカいし。
紫信は小柄だし。
親子か。
それはともかく。
小さな花が刺繍されたアイボリーのファブリックをアクセントに、ベッドもサイドテーブルも何もかもがミディアムブラウンのウォールナット材で統一されたエレガントな部屋を前に、紫信は頬に手を当てて目を丸くした。
「ま…まぁ… こんな…
よろしいのでしょうか、わたくし…」
「気に入らない?
なら、今度買い物に行こう。
君の好みの家具を揃えよう、そーしよう」
「気に入らないだなんて、とんでもない!
素敵すぎて、驚いてしまったのですわ。
わたくしには勿体ないくらい…」
「勿体ない?
それこそ、とんでもない。
僕には君の理想郷を作る義務があるのだから、次の休みには買い物に」
「義務!?
あの、いえ、わたくし、このままがイイでごじゃりまする、コレ、ホント」
狼狽のあまりキャラを見失った紫信は、大慌てで部屋に駆け込み、窓際にあるロッキングチェアにストンと腰掛けた。
ふと見下ろせば、様々な春の草花が自然のままの姿で咲き誇るイングリッシュガーデン…