花京院家の愛玩人形


吹き抜けになっている玄関ホールの奥にある階段を上がると、ソコはプライベートスペース。


「ココを君の部屋にしようと思うンだケド。
陽当たりもいいし、前の部屋と雰囲気が似ているから、落ち着くだろう?」


真鍮のドアノブがついた木のドアを開けた要は、紫信の腰に軽く手を当ててエスコートしながら言った。

どーでもいいケド、絵面がオカシィ。

要は無駄にデカいし。
紫信は小柄だし。

親子か。

それはともかく。

小さな花が刺繍されたアイボリーのファブリックをアクセントに、ベッドもサイドテーブルも何もかもがミディアムブラウンのウォールナット材で統一されたエレガントな部屋を前に、紫信は頬に手を当てて目を丸くした。


「ま…まぁ… こんな…
よろしいのでしょうか、わたくし…」


「気に入らない?
なら、今度買い物に行こう。
君の好みの家具を揃えよう、そーしよう」


「気に入らないだなんて、とんでもない!
素敵すぎて、驚いてしまったのですわ。
わたくしには勿体ないくらい…」


「勿体ない?
それこそ、とんでもない。
僕には君の理想郷を作る義務があるのだから、次の休みには買い物に」


「義務!?
あの、いえ、わたくし、このままがイイでごじゃりまする、コレ、ホント」


狼狽のあまりキャラを見失った紫信は、大慌てで部屋に駆け込み、窓際にあるロッキングチェアにストンと腰掛けた。

ふと見下ろせば、様々な春の草花が自然のままの姿で咲き誇るイングリッシュガーデン…

< 96 / 210 >

この作品をシェア

pagetop