花京院家の愛玩人形
「本当に素敵…」
うっとりと窓の外を眺めて、紫信は呟いた。
そして、ロッキングチェアを揺らそうと背後にやってきた要を首を捻って仰ぎ、彼女こそが花であるかのように可憐に微笑む。
「ありがとうございます、要。
わたくしは幸せですわ」
「…
綺麗だ…」
「なんですって?」
「あー… えー…
僕のほうが幸せだって話。
それより、向かいの部屋は書庫になっている。
君が好きな時に、好きな本を読むといいよ」
要は長い前髪で顔を隠すように俯き、口の中でボソボソと言った。
もう、ね。
直視できねーよ。
彼女、眩しすぎる。
でも、別の話題として振ったソレは、マズかったンじゃねェの?
「まぁ!
書庫があるなンて!」
ロッキングチェアからピョコンと飛び降りた紫信は、弾む足取りで要に近づいた。
彼の手を取り、小さな両手で握りしめて。
彼の顔を覗き込み、大きなタレ目を潤ませて。
頬を紅潮させ、彼女こそが天使であるかのように愛らしく微笑む。
「なんと申し上げればよいのか…
感謝の言葉もございませんわ。
幸せすぎて、死んでしまいそう…」
「…
コレ、僕が死んだわ」