花京院家の愛玩人形
「なんですって?」
「あー… えー…
僕のほうが幸せすぎて、フェニックスの尾がいくらあっても足りないって話。
さ、もう行こう、他の部屋に行こう。
これ以上天使に召される前に行こう」
要は紫信が繋いできた手をそのまま引いて、彼女が大変お気に召したらしい一室をそそくさと逃げ出した。
まぁ、ドコに行こうと即死攻撃食らいそうですケドね。
天使なお人形は凶悪だ。
さて、さらなる殺戮の予感に怯えながらも、次は…
「どーぞ、ココは僕の部屋」
「ココが要の…?」
「そう。
工房のソファーベッドで寝ちゃう夜も多いンだケドね」
要の手によって開かれた、さっきの部屋と同じ仕様のドアをくぐった紫信は、少し意外そうな表情で辺りを見回した。
部屋の中央にデーンと構える、ヘッドボードのない巨大なフロアベッドも。
コーナーに追いやられた、L字型のパイプデスクも。
『事務所か』なんてツッコみたくなる、愛想の欠片もないスチールラックも。
コーディネートしたと言うよりも、機能性重視で選んだらこーなっちゃった的グレー主体の色調も。
まさに、あまり身の回りにこだわらない現代男子あるある。
他の部屋との対比がスゲぇよ。
だが…
この家全体の雰囲気とは大きくかけ離れているものの、意外なのはソコじゃないのネ。