きみに、好きと言える日まで。
30分くらいが経過したときだった。
「まひっ!大丈夫か!」
開いた扉の前に、息を切らしてさっきよりも泥だらけになった耀くんがいた。
「え……なんで……?」
下山して救助を求めに行ったはずの耀くんが。
どうして?
「良かった……」
そう言って、毛布ごとあたしを包み込んだ。
「怖くて震えて泣いてると思った」
耀くんの言葉は、毛布に吸収されていく。
けど、はっきりあたしの耳に届いた。
「ねぇ……どうして耀くんが……」
抱きしめられていることよりも、今、ここに耀くんがいることに驚いて。
「救助が来るまで、まひをひとりになんてしとけねーよ。グループの奴らに追いついて、速攻で下りて救助よこすように頼んできた」
みんな随分下に降りていたはずなのに。
顔に跳ね返った泥。
切れた息。
耀くんは、そこからまたダッシュで山を登って来たの?
考えただけでも胸がいっぱいになった。
「耀くんの……ばか」
ありがとうって言わなくちゃいけないのに。
ありがとうと大好きが溢れすぎて、そんな言葉になってしまった。