きみに、好きと言える日まで。
グワーッと握力マシンに力を入れ、その手を返してみる。
「それだけの気力があるんだ。陸上の出来ない夏、耀太がフラフラしないようにここで監視してるんだ」
さっき怪我人扱いしてたと思ったら。
チッ。
……わけ分かんないことばっか言いやがって。
「いいのかよ、親父」
「なんだ?」
「こんなとこで油売ってて」
「ハハ……油か。これでも一応主治医なんだがな」
とってつけたように、親父はカルテに何かを記入していく。
「俺なんかより、もっと診てやらなきゃいけない患者が沢山いるんだろ?俺なんかいいから早く行けって」
シッシッ……と片手で追い出す動作を見せると、
「ああ、じゃあそうするな」
苦笑いしながら親父は去っていく。
このとき。
親父がどんな気持ちで俺を訪ね、笑顔を作っていたかなんて、俺はまだ知らなかった。