きみに、好きと言える日まで。


それと一緒に、あたしの耳に届いたのは───






「ヨウくんのところ」






足が氷のように固まった。


閉まる寸前の扉の向こうには、彼女の長い足が一瞬見えて



───バタン


重い扉がその姿を隠した。





ヨウくんってなに…。


ヨウくんって。



……耀くん!?




ハッ……


我に返ったあたしは、後を追うように駆け出した。


広瀬さんの言っている意味が分からなかったから。



どうして広瀬さんが、耀くんを……。


急に不安に駆られ、あれだけ遠ざかりたかった教室へ急ぐ。


階段を下りる足がもつれた。


はぁ……はぁ……。



「……っ」



教室に飛び込んで。


目に入ったのは。



耀くんの隣で、微笑む


広瀬さん……。



今日の髪型にふさわしい、柔らかな笑み。


今の今まで誰にも見せたこともないような笑顔を、耀くんに見せていた。




どうして広瀬さんが耀くんの隣に?


さっき耀くんを揉みくちゃにしていたクラスメイト達は弾かれ、今はふたりきりの世界。


わけがわからなくて、あたしはその場に立ち尽くす。



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