きみに、好きと言える日まで。
目を逸らせない現実
【耀太】
「耀くん、送ってくれてありがとう」
「じゃあまた明日」
俺は今、家の大きな門の前に立っていた。
クラスメイトの広瀬さんの家……。
富裕層の住まいが軒を連ねる閑静な住宅街。
高級車ばかりがガレージに並び、こんなとこに来慣れてない俺は緊張していた。
広瀬さんに挨拶して、元来た道へ戻ろうとしたとき、
「ねえ、耀くん……あがって行ってくれない?」
広瀬さんが言った。
「…………」
久々の学校で。
毎日帰る頃には疲れきっていた。
人に会うってことが、どれだけ神経を使うのか思い知った。
だから一刻も早く帰りたい。
けど……。
「……耀くん?」
もう一度俺を呼んだ彼女の瞳の奥が、刃(ヤイバ)に変わった。
「じゃあ……少しだけ……」
「よかったぁ。行こ?」
俺の手を取った彼女の瞳は、澄んだ色に戻っていた。