きみに、好きと言える日まで。
種目は、ハイジャンではなく短距離を選んだ。
もう見るのも嫌だったハイジャンのバー。
入部してすぐの頃、部員達が去った夕暮れのグラウンドで。
一度だけ跳んでみた。
これが最後の跳躍だと心に決めて。
体は覚えてた。
ちゃんと跳べた。
嬉しかった。
マットの上から見た空を、しばらく目に焼き付けた。
すっげー懐かしくて。
泣きそうになった。
それでも。
俺はハイジャンを封印した。
───…
「……だろ?」
拓弥の声が現実に戻す。
そうだ、跳べるさ。
だけど。
「………だ」
「……ん?」
「こえーんだ……」
乱暴に閉めたロッカーの扉。
あてた拳が小刻みに震えた。